3日前、大好きなミッフィーの作者であるディック・ブルーナさんが亡くなりました。
89歳。自宅で安らかに息を引き取ったというから、ホッとしました。
見るからに素敵なおじいちゃん。作品も愛されて良い生き方だなぁと思います。
大人が持ってもおかしくないミッフィーの魅力
そういえば、幼い頃ミッフィーを読んだ記憶はない。私はどちらかというとムーミンにハマっていたので、ミッフィーを知ったのは小学生くらいだったと思います。
小学生の頃、私はキャラものが大嫌いで、ディズニーもサンリオも嫌だった。
幼稚だし、色使いが派手すぎてくどいなぁと思っていて、キャラグッズが許容できない子どもだった(そのくせ、中学校くらいにあっさり寝返る)。
そんな小学生だったのだけど、ミッフィーはなぜか許せた。
確か20代くらいの女性がミッフィーグッズを使っているのをみて、「あ、可愛い」と思ったから。大人が持っても違和感がないくらい、シンプルで可愛らしいなと思いました。
それ以来、ずっとミッフィーのことが好き。
下敷き、ポーチ、キーホルダー、ぬいぐるみ、タオル。家中ミッフィーというわけではありませんが、気に入ったグッズがあると買っています。
子どもが生まれてからは、「娘が使うから!」を理由にミッフィーグッズ集めが加速(笑)幸い娘はミッフィーが好きなようなので都合が良い。娘のためと称して堂々とミッフィーグッズを買うことができています。
ミッフィー展でわかったシンプルすぎる絵の理由
2年前、銀座松屋で開催された『ミッフィー展』に行って、ミッフィーの見方が少し変わりました。
それまで、「ミッフィー可愛い」という気持ちがありつつも、シンプルすぎる絵に対し「手抜きなんじゃ…?」みたいな気持ちもどこかで持っていたんです(ブルーナさんごめん)。あと、輪郭の黒いラインがあまりにも同じ太さで綺麗すぎるから、「CGなのかな?(やっぱ手抜きじゃん!)」とかも思っていた。
ミッフィー展に行って、原画やブルーナさんが作業している動画を見て、
- 全部が手描きだったこと(ペンを使わず全部筆!)
- 何回も何回も繰り返し考えられたデザイン、ストーリーであること
がわかりました。あんなに統一した太さのラインを、全部細い筆で描いているのだから驚きます(点を描くようにゆっくりゆっくり動かしていく)。スケッチは納得のいく形ができるまで、時には100枚以上書くこともあるのだそう。
文章には、
- 必ず4行にする。
- 2行目と4行目に韻を踏む。
という決まりを作っているそう。日本語の訳文では韻がわかりませんが、子どもが側で聞いている様子を想像しながら、何度も検討を繰り返すそうです。
また、シンプルすぎる絵の理由が
かたちを表現するのにどこまで削ぎ落とせるか追求している。
昨日より今日、もっともっとシンプルにするにはどうしたらいいか考えている。
とおっしゃっていて、それを聞いて納得できました。それを知ってから絵本を読んで見ると、「あぁ、このラインはないと違うものに見えるな」とか「これは残したんだな」というのがわかります。
例えばこちら▼
雲をこんな風に表現するのはディック流。ただ単に輪郭だけだと立体感は出ない。雲の下の部分、白い部分に数ミリ黒い線を伸ばすだけで立体的になるんだな、とか、ミッフィーが雲に乗って動いているのを表すラインが耳の部分に入っていて、これがあるから動きが出るんだな、とか。
基本は削ぎ落とせるだけ削ぎ落とそうとしてるんだけど、必要なラインは残してる(もしくは足している)。そんな風に作品を楽しむようになりました。
また、マティスにも影響を受けているんですよね。
ミッフィーは、マティス同様、切り絵の手法で描かれているんだそう。
ちなみにこのミッフィー展のグッズが可愛すぎて7000円ほど散財しました(笑)
ディック・ブルーナさんに対する興味
ミッフィー展以来、ディック・ブルーナさんに対する興味も出てきました。だってこんなにこにこしたおじいちゃん、絶対良い人に決まってる!!
この本は私のお気に入りです。
最初のページにこうあるんです。
私のことが書かれたこの本が、あなた自身の夢を実現させる役に立つよう、願っています。
まさにそんな内容で、ディック・ブルーナさんはアーティストになるまでに結構苦労しています。幼い頃は戦争中で疎開。親に反対されたアーティストへの道。奥さんにはプロポーズを一度断られてたり(笑)奥さんの父親に「娘と結婚するならちゃんとした職業についてもらわないと困る」と言われてデザイナーになったり。
それでも諦めなかったというか、昨日より今日、今日よりもっといいものを、毎日毎日追い求めている。そういう姿勢がディックさんの魅力なんじゃないかな、と思います。ストイックなようなんだけど、にこやかで同時に楽しんでいるというのがまたチャーミングです。
毎日、自宅から15分ほど離れたアトリエまで自転車で通っていたそう。自転車を漕ぎながらパッとアイディアがひらめくと、自転車を止め、しょっちゅう手帳にメモしていたそうですよ。そんな可愛い姿がもう見られなくなったんだなと思うと寂しい感じです。
いつか行きたい
オランダにあるミッフィーミュージアムにいつか行きたいと思っています。
オランダもすごく素敵なんだろうな。
いや、むしろこっちでもいい。
ディックさん、素敵な作品をありがとうございました。
ご冥福をお祈りいたします。