八丈島から都内に帰っていたおかげで、「行きたいけど行けるかな〜」と思っていた【エルメスの手しごと展】に行けました。最終日である19日にギリギリ駆け込みましたよー。
エルメスの「ものづくり」に不可欠なもの。それは時間、素材、道具、才能、感性、知性、そして熟練した手。どのようなささやかなディテールにも、その裏側には、注意深いまなざしを持ち、完璧な仕事への誇りを抱くひとりの人間の存在があります。
今回、エルメスの職人たちはアトリエを出て、みなさまにその情熱、伝統の技の数々をご紹介するためにやってきます。みなさまのあらゆる質問にもお答えしたいと願っております。素材が姿を変え、オブジェとして生まれ変わっていくさまをじっくりとご覧ください。
会場は表参道ヒルズ。場内はいくつかのブースに分かれ、職人さんたちが日々使っている道具で実際にエルメスの作品を作っているところが直近で見られます。
しかも、通訳さんが側にいるので、聞きたいことは何でも即通訳してくれるんです!!
すごい。こんな貴重な体験が無料でいいんだろうか。。
最終日の今日は、日曜日(三連休の中日)。しかも表参道はパレードっぽいイベントをやっていたので激激激混みだったのですが、何とか見たいブースは絶対生で見てやろう!と思って頑張りました(笑)
エルメスの作品にどんな仕事があるのか
どんな職人さんが来ているかというと、
- 鞍職人
- 皮革職人(バッグを作る)
- 石留め職人(アクセサリーに宝石をつける)
- シルクスクリーン製版職人
- シルクスクリーンプリント職人
- 縁かがり職人(スカーフの最後の仕上げ、縁をかがる)
- 時計職人(何百ものパーツを組み合わせる)
- クリスタル職人(グラスや花瓶を作る)
- 手袋職人
- ネクタイ縫製職人
- 磁器絵付け職人
↑赤字にしたのが、私が近くで見た職人さん。
皮革職人やシルクスクリーンプリントも見たかったのですが、人が多すぎて近くに行けなかったり、時間が合わなかったりして見られなかったのもあります(ずっとデモンストレーションしてるわけではない。30分〜1時間程度の休憩があってまた戻ってくる)。
私は裁縫とか絵を描くことに関心があるので、それにちなんだ仕事を中心に見ました。
各ブースに分かれてるので、気になる職人さんのところにだけ行ってもいいし、全部の仕事を見てもいい。好きな時に移動しても大丈夫。「何年この仕事をやっているのか」「他には何人職人さんがいるのか」など気になったことを聞いてもいい。技そのものについて質問しても答えてくれます!!
膨大な時間がかかるエルメスのスカーフ
会場のスタッフさん・職人さん・通訳さんが皆、首元に巻いていたエルメスのスカーフ。鮮やかでとっても素敵でした。
スカーフの製作には、
- シルクスクリーン製版職人
- シルクスクリーンプリント職人
- 縁かがり職人
が携わります。
シルクスクリーンの製版
大元の手描きのデザインをシルクスクリーンにするために、コンピューターに取り込みます。そして、プリントに必要な色毎のフレームに分ける作業、
↑関係ないけど、アンジェリーナ・ジョリーに似てた(笑)
細かいデザインを拡大して、鉛筆、フェルトペン、絵筆など様々なタッチでなぞっていく。
だいたい400〜600時間。難しいデザインだと2000時間もかかるそう。
600時間 ÷ 24時間 = 25日
つまり1枚のスカーフを製版するのに1ヶ月程度かかる。いや、24時間作業してるわけないから、1日8時間作業したとしても、
600時間 ÷ 8時間 = 75日
…2ヶ月以上はかかる。難しいデザインの2000時間なんて、8ヶ月以上ってことになる。
シルクスクリーンプリント
色毎の版に分けたフレームをシルクの布にプリントしていく。
フレームの中に色を入れ、ヘラで広げる。インクの通るところと通らないところがあって、通るところではインクが白い布に移るという仕組み。
人の顔のようなデザインが特に難しく、1つの場所に15回も色を乗せることがあるそう。エルメスのスカーフデザインってとっても細かい。少しのズレも許されない厳しい目でチェックしているそう。
ここでエルメスの方が解説していたこと。
「エルメスはラグジュアリーブランドである前にクオリティーブランドである」ということ。高級ブランドっていうのが先に来るんじゃなくて、高いクオリティが先にある。その証拠に、エルメスのファンの方々は「このスカーフは40年も前に買ったものなのだけど今も使っている」とか「これはお母さんから譲り受けたものなんです」とか、長い時間大切に使っている。つまり質が良い、ということ。
本当にそうだよなぁと思います。
私は100均とか大嫌いなのだけど、それって値段が安い=ちゃちでかっこ悪い、というわけでなくて、細部へのこだわりのなさとかデザインのイマイチさに愛着を持てないからだと思う。
だから、エルメスのように素材も厳選して全て妥協なく高級に、ってわけにはいかないんだけど、少しでも愛着が持てるように、自分で作ったりしている。
高い理由、高いお金を払う価値はちゃんとあるんだな。
話を戻します〜
スカーフの縁かがり
裁縫好きとしては気になる作業(笑)
布は切りっぱなしだとほつれて来るので、縁をかがるんですね。
くるくる〜と丸めてかがっています(ルロタージュという)。ハンカチなどは三つ折りで処理しますが、スカーフは縁も作品の一部というか、肌への当たり方を良くしているのかもしれません。
ミシンじゃなくて手作業っていうのが私としては意外でした。ミシンの方が綺麗っていうイメージがあるからです。このスカーフの縁かがりの場合、糸が見えないように縫わなきゃいけない。そういう場合は機械の方が不向き。人の手ってすごいなって改めて思います。
- 玉止めはしない。同じ場所で3回くらい縫って止める
- 表面に見えるのがフランスかがり、裏に見えるのがイタリアかがり(エルメスはフランス)。
- 角は内側の布をカットする。
こんなところが参考になりました。家でやってみようかな。
ちなみにデモンストレーションをしていた職人さんはその道5年のベテランで、ルロタージュを習得するには最低12ヶ月の訓練がいるそうです。
磁器の絵付け
個人的にすごーく見ててワクワクしたのがお皿の絵付け!これやりた〜い(笑)
細い筆で絵の具をちょっとずつ混ぜて塗っていくんですが、手しごとだったんだ!!と思いましたよ(そりゃそうか)。
混ぜ具合が絶妙で、黄色いとこ塗ってるだけでも、下の方にちょっと茶色を混ぜて影を表現してる!
そのペースでやってったら1枚に何時間かかるんだろう…そりゃあ1000円とかそこらでは売れないわ!って思いました。
美しいもの、丁寧なものの中で暮らす
私の理想は、すべてのものが素晴らしく美しいデザインで作られることです。美しさの基準は人それぞれだったりするけど、一つ一つに手を込めて作る、でもいい。
本当にさ、服とか家具とか雑貨とか食器とかなんでもそうだけど、お店で売ってるすべてのものが売れるわけないでしょう。使えない分まで作っちゃってるんだよね、人間は。売れなかった服、どこにいくのかな。セール会場?発展途上国?使われるんならまだいいけど、廃棄だって当然あるでしょ。その無駄になったエネルギー(資源も労働力も)何なんだろうって思います。
だから、使うものしか作らないでいいと思う。全部オーダーメイド。本当に大事なものしかない世界。満足度は相当上がると思うんだけどな。
断捨離とかミニマリストとか、ものはそんなにいらないし必要なものを長く大切にっていう流れは少しきてる。私はアール・ヌーヴォーの時代にまた戻る気がするんだけどどうかな?
話、超ズレました。いつもだけど。
10月には名古屋、博多で開催!
ホームページ曰く、2017年10月に名古屋、博多での開催を予定だそうですよ!関西、九州の皆さん必見ですね♪
華やかなブランド好きな方だけでなく、地味な手しごとが好きな方(私はこっち)にもとても楽しめるイベントだと思います。
スカーフ、お気に入りの一枚を欲しくなっちゃいますね。エルメスの戦略にまんまとはまっているかもな(笑)