mimoza note

八丈島に住む刺繍作家Mimoza SHOJIのブログ。

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【第23回いたばし国際絵本翻訳大賞】落選した訳文を公開します

去年の秋に行われた『第23回いたばし国際絵本翻訳大賞』というコンテストに応募していました。

 

 

外国語で書かれた課題図書の絵本を、日本語に翻訳するというコンテスト。

今年は英語部門とイタリア部門がありました(もちろん英語部門で参加)。

 

www.city.itabashi.tokyo.jp

 

 

結果、落選してしまったので、悔し紛れに私の翻訳を公開します(笑)

※入選作品の著作権は板橋区に帰属するようですが、落選作品は個人のものだよね?

 

 

 

今回の課題図書はこちらでした▼

Stop, Thief!

Stop, Thief!

 

 

『どろぼう だぁれ?』

ヒーザー・テカヴェック さく / しょうじミモザ やく

 

あるひ はたけの おじさん いった。
「マックス こまった どろぼうを つかまえられるか? おねがいだ」
いぬのマックス それきいて、 ぴょんととびはね こういった。
もちろんできるさ まかせてよ! ぼくに できない ことはない!
けれども どろぼう だれなのか、 どんなすがたか わからない。
はたけの おまめや にんじんや、 いちごや きのみも
ぜーんぶ たべちゃう わるいやつ。
さぁ どろぼうを つかまえて! はたけが ぜんぶ なくなるまえに。


いぬのマックス ロープをもって どろぼうさがしに しゅっぱつだ。


すぐに マックス にんじんの はたけで なにか みつけたよ。
ぶんぶんぶんと へんなおと。
はっぱの かげに ちっぽけな あおい むしさん とまってる。
はっぱを ちゅーちゅー すっている!


それみた マックス こうさけぶ。
「まてまて どろぼう! みつけたぞ!」
マックス ロープを なげたけど、 むしさん とんで にげちゃった。

「もしや わたしに いいました?」
ひょっこり うさぎが かおをだす。おくちに にんじん ほおばって。
マックス うさぎに こういった。
「ちがうよ きみのことじゃない。 ぼくは どろぼう さがしてる。
はたけの おまめや にんじんや、 いちごや きのみも
ぜーんぶ たべちゃう わるいやつ。」


「どろぼうですって なんて ひどい!わたしの にんじん たべちゃうなんて。」 うさぎは もぐもぐ おこりだす。
「けど そんなやつ みてないわ。」うさぎは きょろきょろ かんがえる。
マックス うさぎに こういった。
「やつは ぜったい ここにいる。 こそこそ ずるい やつなんだ。」
うさぎは まじめに こういった。
「マックス いくのよ! どろぼうを はやく さがして つかまえて。
あなたが さがしているあいだ、わたしが にんじん まもるから。」
マックス うさぎに おれいを いって、どろぼうさがしに はしりだす。
うさぎが もぐもぐ している あいだ。


マックス おつぎは いちごの はたけ。
あおい むしさん みつけたぞ!
「まてまて どろぼう!にがすもんか!」
けれども むしは とんじゃった。
むしさん おいかけ はたけのなかを、ぴょんぴょんぴょんと とびまわる。
どすんと ぶつかる ピンクの おしり。
くるんと しっぽが はえてるよ。

「あら マックスね こんにちは。」
そういったのは まんまる ぶたさん。
ごろんごろんと ねそべって、あまーい いちごを たべてるよ。
マックス いそいで こういった。
「ごめんね いま ぼく いそがしいんだ。
はたけの おまめや にんじんや、 いちごや きのみを
ぜーんぶ たべる、こまった どろぼう つかまえなくちゃ。」


「まぁ なんという わるいやつ。」
ぶたさん こわい かおになり、 あしもと なにかを かくしたよ。
「マックス、みていてあげるわ いちご。あなたは はやく おいきなさいな。」


マックス うなずき おれいを いうと、どろぼうさがしに はしりだす。
しばらくいくと、きこえたぞ!
おまめの はたけで ぶんぶんぶん。みつけた あおい むしさんだ!
「まてまて どろぼう!こんどこそ!」
マックス さけんで とびかかる。
けれども むしさん すばしこく、はたけの そとに とんでいく。


「メェーックス。」
おまめの なかから しゃがれごえ。「なにを そんなに あわてているんじゃ?」
そう マックスに きいたのは、やせた やぎの おじいさん。
おやおや? やぎさん おくちから おまめが あふれて でているよ。
マックス いそいで こういった。
「ぼく どろぼうを さがしてるの。はたけの おまめや にんじんや、 いちごや きのみを ぜーんぶ たべる、わるい どろぼう つかまえなくちゃ。」
それきき、やぎさん こういった。
「なんちゅう やつだ。 けしからん。マックス はやく いきなさい。
わしが おまめを みはってやろう。」

マックスは はしりだす。
それみた やぎさん おおいそぎ。 おまめを むしゃむしゃ たべちゃった。


マックス はしって かんがえた。
「ほかの ばしょにも いかなくちゃ。」
むかったさきは くだものばたけ。
みみをすませば きこえるぞ! きのてっぺんから ぶんぶんぶん…
「おい!おりてこい どろぼうめ!」マックス おおきく さけんだよ。
すると だれかが へんじした。
「どろぼうなんて いないけど。 ぼくらが いるよ。 かぁかぁかぁ!」
「ぼくも」「ぼくも」と こえがする。
はっぱの なかから かおをだす、3わの からすのきょうだいだ。

マックス からすに こうきいた。
「ぼく、どろぼうを さがしてるんだ。 きみたち そこから みなかった?」
からすの きょうだい こういった。
「みてない。」「そいつは」「どんなやつ?」
「ちっちゃな ぶんぶん あおいやつ。はたけの おまめや にんじんや、 いちごや きのみも ぜーんぶ たべちゃう わるものさ。」
3わの からすは くちぐちに、
「それなら あっちだ。」ひだり さす。
「それから こっちだ。」みぎを さす。
「そのあと そっちだ。」そらを さす。

そのとき、あいつが めのまえを ぶんぶんぶんと よこぎった!
「「「さぁ おいかけろ!つかまえろー!」」」


マックス どんどん おいかける。
はしって とんで かみついて。
いけも のはらも とおりこし、ついに はたけの そとへ でた。
ぶんぶんむしは とんでいき、マックス さいごに こうさけぶ。
「どろぼうむしめ!もう にどと もどって くるな!わかったか!」


しごとを おえた マックスは、みんなが まってる こやに いく。
みんなは すぐに こうきいた。
「マックス、どろぼう つかまえた?」
マックス じしん たっぷりに
「もちろん!にどと こないよう ちゃんと いってやったのさ!」
みんなも いっしょに よろこんだ。
「やったね これで あんしんだ。おまめや にんじん、いちごに きのみ、みーんな ぶじに まもられた!」
マックス にっこり ほほえむと、おじさんの ところへ かえったよ。

「ねぇ がんばりやさんの マックスへ、ごちそう たくさん じゅんびして、みんなで パーティー しましょうよ。」
みんなは もちろん だいさんせい!
おまめに にんじん、いちごや きのみ、みんなで せっせと あつめたよ。


みんなで つくった ごちそうの やま。
「マックス きっと よろこぶわ。」
「でも もし わるい どろぼうが、 もどってきたら どうしよう?」
「また ごちそうが あぶないぞ。」
「どこかに かくして おきましょう。」
そこで みんなは おおいそぎ。せっせ せっせと はたらいた。
おまめや にんじん、いちごや きのみ、ぜーんぶ いそいで かくしたよ。 

ここなら ぜったい みつからないぞ。
みんなの おなかは ぽんぽこりん。

 

おしまい

 

 

正確すぎる訳はつまらない

最初は、英文法の勉強か!?ってくらいガチガチに訳してみたんです。単語は辞書で引いて絶対間違いのないようにしたし、構文とかめっちゃ考えました。

 

 

でもつまんない文章になるんですよ。

絵本読んでつまんないって最悪だなと思って、締め切りギリギリになって全部やり直す事にしました。

 

  • 子どもが読んで楽しい・ワクワクする
  • 大人も楽しんで読める
  • 絵本の持つ雰囲気を表現する

 

これが大事なんじゃないかな、と私は思ってます。

 

 

ちなみに今回の絵本は、主人公のマックス(という犬)が、畑の作物を盗む泥棒を捕まえるため、農場を走り回るストーリー。その中でうさぎやぶたや、やぎやカラスとのやりとりがある(実はこの動物たちが真犯人なんですが…)。

 

とにかくマックスは早く泥棒を捕まえようと急いでるんですね。だからその【疾走感】みたいなものを表現しようと思いました。

そのため、テンポよく流れるように全文リズムを重視しました。一番優先させたのはここです。

 

 

絵本翻訳の難しさ

リズムを第一に考えた訳で、もちろん悩んだ点もあります。

 

文全体の統一性

例えば名前の呼び方。登場するうさぎ・ぶた・やぎ・からすに「さん」を付けるかどうか。統一したかったのですが、どうしても語呂が良くない箇所が出てくるので、うさぎは呼び捨て、ぶたややぎはさん付け、とバラバラになってしまいました。

 

誤訳?改変?

他にも、「からすのきょうだい」と訳した部分は、実はcousin(いとこ)なんです。けれど、子どもが読む絵本で「いとこ」は難しいんじゃないか?と思いました。この部分を誤訳と見るか、子どもに合わせた改変と見るか、作者によっても希望があるだろうし、翻訳者の好みもあるでしょう。コンテストという形式上、作者の方とやり取りできないので、自分の思った通りに訳してみました。

 

 

リズムやストーリーを重視する事でほぼ意訳となってしまったことも、どう判断されるかな?という迷いがありました。でも英語部門だけでも791名(イタリア語部門は246名)も応募されてるんです。似たような訳は多いはずなので、だったらいっそ大胆に訳してしまおう!どっちにしても落ちるなら面白い訳の方がいいじゃん!と思いました。

 

落選しましたが、自分でやった思い出にはなるし、せっかく訳したのだからということで、送られてきた課題図書に手書きで自分の訳を書き込みました(笑)娘に読む分にはこれでいいのです。

 

 

は〜でも結構大変だった。来年は…余裕があったらやるかなぁ(笑)

8月から10月にかけて、参加申し込みの募集があります。板橋区民や都民でなくても応募できますよ♪

 

www.city.itabashi.tokyo.jp